登録有形文化財 駿河亭に泊まる。
2021年3月24日
有馬温泉の小宿・・・素泊まりで泊まれる宿の一つに駿河亭(2室)があります。
2020年の春、リニュアルしたてですが、建物の躯体は古くこのたび登録有形文化財に登録される事が決まりました。
【概要】
- 所在地:神戸市北区有馬町字有馬830
- 員 数:1棟
- 登録基準:「一 国土の歴史的景観に寄与しているもの」
- 所有者:個人所有
- 建設年代:1926(大正15)年/2020(令和2)年改修
- 施工主:清水 弥三郎(地元の大工)
- 建築面積:42.04平方メートル(延床面積:126.12平方メートル)
- 構造、形式:木造3階建、金属葺、外壁は、杉皮張で化粧垂木(けしょうだるき)【※註6】に杉丸太を用いています。
旧駿河屋・正面(北面)外観
【歴史と沿革】
- 旧駿河屋は、有馬温泉にある元竹細工の工房で、湯本坂に北面して建っています。
- 有馬温泉では、古くから竹細工(主に籠)が湯治客の土産物として販売されていましたが、江戸時代末期から昭和初期にかけて、有馬籠が隆盛を極めていました。
- 駿河屋は、現在の所有者の祖父にあたる、有馬籠(ありまかご)竹細工職人により、開設されました。
- 施工は、地元有馬町内の大工である清水弥三郎で、課税台帳によると、1926(大正15)年に建築されました。
- 木造3階建で、建築当初は、1階は工房と台所で、2階は家族用の住居、3階は湯治客用の貸間として使われていました。
- 2020(令和2)年に改修を行い、1階を物販店、2階・3階を宿泊施設となっています。
旧駿河屋・3階内観
旧駿河屋・2階内観
旧駿河屋・位置図
旧駿河屋・詳細位置図
【特徴・評価】
- 旧駿河屋のファザードデザイン【※註7】は、杉皮の外壁に現し(あらわし)【※註8】の杉丸太垂木や野地板(のじいた)【※註9】、大きく張り出した勾配の緩い屋根など、当時の数寄屋風普請(すきやふうふしん)【※註10】を感じさせると同時に、2・3階の縁側建具は、一本溝となっており、雨戸を開け放つと外気に開放される構造となっています。
- 周辺の旅館やホテル・店舗などが、鉄筋コンクリート造に建て替えられ、古来の有馬温泉の温泉街の景観や風情を失いつつある中で、大正時代から昭和初期の面影を色濃く残した建築物として、貴重な存在といえるでしょう。
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