登録有形文化財に御所坊が認定されました。

2021年3月23日


この度、御所坊本館、御所坊新館、ギャラリーレティーロドウロの蔵の建物が登録有形文化財に答申されました。という事は、ほぼ登録されるという事です。

有馬では御所坊の隣の隣、昔土産物店だった駿河屋さんの建物も同時に登録されます。

有馬温泉でまず最初の試みです。そして登録されるだろうという店舗の主人に申請を促しています。

まずはご報告です。

(3)御所坊本館

【概要】
  • 所在地:神戸市北区有馬町字有馬859他
  • 員数:1棟
  • 登録基準:「一 国土の歴史的景観に寄与しているもの」
  • 所有者:法人所有
  • 建設年代:明治時代中期/1931(昭和6)年増築/1955(昭和30)年改修
  • 設計主・施工主:いずれも不明
  • 建築面積:1,498平方メートル
  • 構造、形式:木造3階建、桟瓦葺
  • 備考:この建物の原型は、明治時代中期の「御所坊川別荘」と呼ばれていた建物で、旧御所坊本館は、1943(昭和18)年に、火災により焼失しています。

御所坊本館・正面玄関 御所坊本館・正面玄関(東側から)

【歴史と沿革】
  • 御所坊は、1191(建久2)年に、有馬温泉の湯殿の脇に店を構え、温泉(金泉)を管理する「湯口屋」として、湯元前にて創業しています。
  • 藤原定家(ふじわらていか)【※註11】の旅日記である『明月記(めいげつき)』には、1208(承元2)年10月、「湯口屋」には、平頼盛(たいらのよりもり)の後室(こうしつ)【※註12】が泊っていたと記されています。
  • 「御所坊」の由来としては、14世紀末、室町幕府三代将軍足利義満(あしかがよしみつ)の湯口屋逗留(とうりゅう)【※註13】を期に「御所」と呼ばれるようになり、1483(文明15)年8月、蓮如上人(れんにょしょうにん)【※註14】が御所へ逗留した頃から、御所の名前に「坊」がついたと言われています。
  • 現在の御所坊本館の原型は、明治時代中期の「御所坊川別荘」と呼ばれていた建物で、旧御所坊本館は、1943(昭和18)年に、火災により焼失しています。
  • 本来、温泉地等では、「別荘」とは、1週間単位の長期滞在で避暑などに利用される専用の旅館のことを指していました。
  • 御所坊には、谷崎潤一郎をはじめ、吉川英治、与謝野晶子、伊藤博文など、多くの文化人が、文筆活動や保養のため、訪れています。

御所坊本館・娯楽室 御所坊本館・娯楽室

【特徴・評価】
  • 一般的には「旅館」という性格上、社会情勢の変化や各時代の流行によって強く影響を受けやすいため、その旧状が大きく失われる場合が多く見られがちです。
  • この建物の内部意匠における最大の特徴は、建設当初からの保存状況が極めて良好である点です。
  • 1931(昭和6)年に西側部分を増築し、1955(昭和30)年に玄関部分の改修を行っていますが、現在でも、明治時代に建設された当時の面影を留めています。
  • 木造和風建築で、屋根は、東面の玄関上が切妻(きりづま)で、西側が寄棟(よせむね)屋根となっています。周辺を銅板一文字葺き、中央部を瓦葺きとしています。
  • 外壁は、真壁(しんかべ)造り【※註15】漆喰(しっくい)仕上げで、一部に、焼き杉板張【※註16】とモルタル吹付仕上げが混在しています。

御所坊本館・大広間 御所坊本館・大広間

御所坊本館・和室 御所坊本館・和室

御所坊位置図 御所坊(本館・新館・蔵)位置図

御所坊・詳細位置図 御所坊(本館・新館・蔵)・詳細位置図

(4)御所坊新館

【概要】
  • 所在地:神戸市北区有馬町字有馬853
  • 員数:1棟
  • 登録基準:「一 国土の歴史的景観に寄与しているもの」
  • 所有者:法人所有
  • 建設年代:1955(昭和30)年頃/1961(昭和36)年増築
  • 設計主・施工主:設計主は不明、施工は、石田組
  • 建築面積:木造3階建(426平方メートル)、鉄筋コンクリート造と木造の混構造(357平方メートル)、鉄筋コンクリート造平屋(183平方メートル)
  • 構造、形式:木造3階建部分と、鉄筋コンクリート造一層に、木造二層をのせる混構造(こんこうぞう)【※註17】部分から構成されています。
  • 外壁は、モルタル吹付仕上げで、屋根は桟瓦葺、一部は陸屋根。

御所坊新館・外観 御所坊新館・外観(東側から)

御所坊新館・和室 御所坊新館・和室

【歴史と沿革】
  • 御所坊新館(翠巒御坊:すいらんごぼう)【※註18】は、平屋の鉄筋コンクリート造と地下1階、地上2階建の木造部分と、1階が鉄筋コンクリート造、2階が木造の混構造部分の合体した複雑な構造となっています。
  • 1955(昭和30)年頃、本館の増築時に、本館のための調理場として、木造3階建ての建物を建設しました。
  • 1960(昭和35)年に、下層階が、鉄筋コンクリート造(建築面積175平方メートル)、上層階が、木造(建築面積181平方メートル)の混構造部分(357平方メートル)が増築されました。
  • 1961(昭和36)年に、木造部分の一部を改修して、平屋の鉄筋コンクリート造に改造しています。
【特徴・評価】
  • この建物の特徴は、内部空間にあります。幾何学図形をモチーフにした記号的表現や現色による対比表現などの特徴を持つアール・デコ【※註19】や新造形主義【※註20】が、内装のデザインに影響を与えていると思われます。
  • 「水平線や垂直線を重視したシンプルな形態」、「自由なラインと原色を使った表現」等、廊下の照明器具のデザインや客室の障子桟の意匠などに、その特徴が表れています。

(5)御所坊土蔵

【概要】
  • 所在地:神戸市北区有馬町字有馬836-1
  • 員数:1棟
  • 登録基準:「一 国土の歴史的景観に寄与しているもの」
  • 所有者:法人所有
  • 建設年代:1890(明治23)年/1985(昭和60)年頃改修
  • 設計主・施工主:いずれも不明
  • 建築面積:45平方メートル
  • 構造、形式:土蔵2階建、切妻造妻入、屋根は桟瓦葺
  • 備考:現在はギャラリーとして活用されています。

御所坊蔵・外観 御所坊蔵・外観(南側から)

【歴史と沿革】
  • 棟札から、建築年代は、1890(明治23)年で、1943(昭和18)年に焼失した御所坊・旧本館の付属建造物でしたが、焼失を免れました。
  • 設計者や施工者は不明で、建設当初より、倉庫として使用されていましたが、1985(昭和60)年頃に内部を改修して、ギャラリーとして活用されています。
【特徴・評価】
  • この建物は、土蔵造りで、基壇及び出入口の石段は、御影石を使用しています。
  • 屋根は、切妻造の桟瓦葺きで、外壁は、漆喰壁で、腰部分【※註21】は、「なまこ壁」【※註22】です。
  • 建設当初の外観を良好に保っており、なおかつ、歴史的建造物を利活用したまちづくりに寄与している点で、評価が高いと思われます。

御所坊蔵・2階内観 御所坊蔵・2階内観

御所坊蔵・1階内観 御所坊蔵・1階内観

2.文化財登録制度の概要

  • 近年の国土開発、土地開発の進展、生活様式の変化等により、社会的評価を受ける間もなく、消滅の危機にさらされている多種多様かつ大量の近代の建造物を中心とする文化財建造物を後世に幅広く継承していくため、届出制と指導・助言・勧告を基本とする緩やかな保護措置を講じる制度で、従来の指定制度(重要なものを厳選し、許可制等の強い規制と手厚い保護を行うもの)を補完する制度です。
  • 登録有形文化財(建造物)は、50年を経過した歴史的建造物のうち、一定の評価を得たものを文化財として登録し、届出制という緩やかな規制を通じて保存が図られ、活用が促進されています。

3.神戸市内の国登録有形文化財(建造物)の件数

  • 今回答申を受けた登録する5件を加えると、神戸市内にある国登録有形文化財(建造物)の件数は109件となります。